ストーリー

垂直の世界へようこそ

 アルプス最高の標高1800メートルに位置するアイガー北壁は、現在も登山家達の心を引きつけてやまない。
2015年7月、MILLETは権威ある地元の山岳ガイド協会と独占的なパートナーシップを締結、その5ヶ月後には、「グレート・スペアヘッド」と呼ばれるこの山のふもとにあるグリンデルワルドにベースキャンプを設置した。
2009年よりシャモニーのガイド協会とも強い絆を育んでいるMILLETは、彼らマウンテンエキスパート達とハイレベルなスポーツ規範や価値観、そして遊び場に対する敬意を共有し続けている。MILLETは製品の革新や開発において、彼らが行うフィールドテストに大きく支えられているのだ。

登山よ永遠に、アイガーよ永遠に

 MILLETは今回、この神秘的な山でフランス人とスイス人の山岳ガイドによるクライミングチームを結成することを考案した。協力してくれたのは、地元のロレンツ・フルティガーとシャモニー育ちのルイ・ローラン。彼らの目的は、共にこの神秘的な壁を改めて訪問し、何がここを代え難い場所にしているのかを見出し、その垂直の美をピッチごとに堪能しながらアイガーの神話を共有することだ。
集合するのには、最高の場所だ。


午前11時。ロレンツは窓際のベンチ椅子に座った。彼の新しいクライミングパートナーはもうすぐやって来る。今日までルイとはメールを数回やり取りしただけで、ロレンツはまだ彼の声も聞いたことがなかった。ルイについて事前にいくらか調べた情報はあった。ルイは2007年からシャモニーガイド協会のメンバーで、元スキーインストラクター。夏期には石工として働き、山小屋の管理人でもある。ふたりにとってクライミングは仕事兼趣味であった。彼らはクライアントと冒険を計画し、世界中の岩をめぐり、あらゆるスポットを巡った。ふたりはまだ顔を合わせてはいなかったが、すでに多くの共通点があった。同じ価値観、真の職業倫理、そして山への深い敬意だ。


午前7時15分。彼らは駅まで速足で歩いた。始発があと5分で出発するからだ。出発前にロレンツは列車の運転手に途中で下ろしてもらうようお願いした。これはここではよく行なわれるやり方で、多くの登山家はストーレンロッホ、現地語で「盗みの穴」という意味の場所を経由してアイガー北壁に向かう。この穴は1912年にトンネルが作られた際に、岩のかけらを捨てるために使われていた。現在ではここは北壁への簡単なアクセスポイントとなっている。列車は止まり、ふたりの登山家はすばやく飛び降りた。

最初のピッチの雪は完璧で、素早く進むことができた。ふたりは少し右にトラバースし、1969年に日本のチームによって登られた「ジャパンダイレクトルート」を登っていく。現在の彼らは当時より進化した技術を持っている。この箇所ではひとつひとつのスタンスをしっかりとつなげなければならない。グレードはM5ほどだ。壁は比較的乾いていて氷が薄い。プロテクションをとるのが難しい。岩の質は悪く、崩れやすい。「かなり前にここをを登ったことがあるけど、こんなに岩質が悪かった記憶はないよ」。ロレンツは言う。

「アルプス最後の三大課題」のひとつと言われたアイガー北壁は、1938年、アンデレル・ヘックマイアーとハインリッヒ・ハラーらによって、伝説的な初登攀がなされた。マッターホルン北壁の初登攀は1931年、グランドジョラス北壁は1935年。最後まで残されたということが、三大課題のなかでもアイガー北壁がもっとも困難だったということを示している。

アイガー北壁は長い間、アルパインクライミングの最高峰としてその名を轟かせ、世界中の優れた登山家たちを魅了していた。彼らは皆この壁を登ることを夢見ていたのだ。ジョン・ハーリン、ラインホルト・メスナー、ミシェル・ピオラ、ルネ・ギリニ……各時代の最高レベルのアルピニストたちがここにやって来て、自分たちの名を刻んでいった。

1980年代には、クリストフ・プロフィとエリック・エスコフィエという当時を代表するふたりのクライマーが、アイガー北壁を含む三大北壁初の「冬季単独連続登攀」をかけて争った。エスコフィエはこのとき、ミレーの革新的なウェアを着て三大北壁に挑んだ。これが、三大北壁=トリロジーの伝説の始まりだった。


ホールドを得るために、ルイは素手で登ることを強いられている。岩質はよくなったが、壁の傾斜はきつくなり、難度が上がって集中のレベルも上がってくる。一部の箇所は8aレベルの難度だ。

ついに終了点にたどり着いたふたりは互いに祝福しあった。この壁で過ごしたのはほぼ7時間。

「一緒にやって本当に楽しかった。最高だったな」
「ルイと知り合って、一緒に登れてよかった。」

このジャパンダイレクトでの初めての圧倒的体験のあと、彼らはまたここで一緒に登りたいと考えている。それも、もしかすると全ルートを……。

ミレーのトリロジー・リミテッド・シリーズは、モダンアルパインクライミングの神髄。それはシリアスなマウンテニアリングへの、独創的な解答なのだ。

このシリーズはエリック・エスコフィエの精神から自由な発想を得ている。彼は山岳コミュニティに、以下のようなメッセージを残した。


「古い慣習を壊すことを、恐れるな」


エスコフィエと同じエネルギーと革新的な精神を持って、ミレーはその専門性を生かし、妥協のない製品ラインアップを約束する。使用する誰もが、大胆になれるように。

Photo @ Jon Griffith